仕事を休むことは逃げじゃない|休職中の罪悪感とのつき合い方

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仕事を休むことは逃げじゃない|休職中の罪悪感とのつき合い方

「自分だけ休んでいて申し訳ない」「みんなに迷惑をかけている」「逃げているだけなんじゃないか」——休職中、あるいは休職を考えている方から、こうした言葉を本当によく聞きます。

診療室でお会いするのは、真面目に、誠実に働き続けてきた方ばかりです。怠けていたから倒れたわけではありません。むしろ、頑張りすぎたからこそ、心と体が「もう無理だ」と限界を伝えてきたのです。

この記事では、精神科専門医の立場から、休むことの医学的な意味、休職中に多くの方が抱える罪悪感のしくみ、そしてその罪悪感とどう向き合えばいいのかを、できるだけわかりやすくお伝えします。本人だけでなく、休職中の家族を支えるご家族の方、職場で部下や同僚をサポートする立場の方にも、知っておいていただきたい内容です。

■ なぜ「休むこと」に罪悪感を感じてしまうのか

休職に罪悪感を抱くのは、決して特殊な心理ではありません。むしろ、日本社会で働く多くの方が共通して抱く感情です。

その背景には、いくつかの要因が重なっています。

ひとつは、「自分の代わりに誰かが仕事を負担している」という現実への申し訳なさです。チームで働いている以上、自分が抜けた穴を誰かが埋めているという事実があり、それを想像するだけで気持ちが重くなります。

もうひとつは、「頑張ること=価値があること」という価値観が深く根づいていることです。子どもの頃から「頑張ることは良いこと、休むことは怠けること」という構図で評価され続けてきた方ほど、休むこと自体に強い抵抗を感じやすくなります。

さらに、うつ病や適応障害そのものの症状として、「自分には価値がない」「自分はダメな人間だ」という認知の歪みが強まることがあります。これは病気の症状であり、本人の人格や価値観そのものではありません。ですが本人にとっては、それが「事実」のように感じられてしまうのです。

つまり、罪悪感は「あなたの性格が弱いから」ではなく、「社会的な価値観」と「病気の症状」が重なって生まれている、説明可能な現象なのです。

■ 休職は、医学的に必要な治療プロセスです

ここで、はっきりとお伝えしたいことがあります。休職は逃げではなく、治療そのものです。

骨折した人が、ギプスをして安静にすることに罪悪感を抱くでしょうか。脳という臓器に過剰な負荷がかかり、機能が低下している状態において、その負荷を取り除くこと——つまり休むこと——は、骨折時の安静と同じ、医学的に必要なプロセスです。

厚生労働省も、心の健康問題による休業からの職場復帰支援について、段階的な手順を踏むことの重要性を明確に示しています。

▼ 参考:厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」

このように、休職は個人の弱さの問題ではなく、医療・労働行政の両面から「必要な回復プロセス」として位置づけられています。「休むことが正しい選択である」という事実を、まず知っておいてください。

■ 休職中によくある「3つの罪悪感」とその向き合い方

診療の現場でよくお聞きする罪悪感には、いくつかの典型的なパターンがあります。それぞれについて、考え方の整理をお伝えします。

【①「同僚に迷惑をかけている」という罪悪感】

たしかに、業務の一部は誰かが引き継いでいるかもしれません。しかしここで考えていただきたいのは、「もし同僚が同じ状態になったら、あなたはどう思うか」という視点です。

おそらく、「無理して出社しないでほしい」「ちゃんと休んでほしい」と思うはずです。あなたが今、無理を押して働き続け、結果的に長期間機能できなくなることのほうが、職場にとっても、あなた自身にとっても、長期的には大きな損失になります。短期的な「申し訳なさ」と、長期的な「回復」を、天秤にかけて考えてみてください。

【②「自分だけ休めて申し訳ない」という罪悪感】

これは、休職という状態を「特別扱い」「ズルい」と捉えてしまう感覚です。しかし休職は、診断書という医学的な根拠に基づいて認められている制度です。あなたが「ズルをしている」のではなく、必要な治療を受けているだけです。

骨折した人が固定具をつけているのを見て、「ズルい」と思う人はいません。心の不調も、見えないだけで、同じように治療を必要としている状態なのです。

【③「このまま治らないかもしれない」という不安からくる焦り】

休んでいることへの罪悪感の裏には、「早く戻らなければ」という焦りが隠れていることがあります。しかし焦って無理に復職すると、再発のリスクが高まることが知られています。回復には個人差があり、「いつまでに治る」という保証はできませんが、適切な治療を続けることで、多くの方が回復し、復職しています。

焦りを感じたときは、「今は治療期間中だ」と自分に言い聞かせてみてください。今すぐ答えを出す必要はありません。

■ 休職中の過ごし方——「何もしない」ことへの不安について

休職を始めたばかりの方からよく聞かれるのが、「何もしない日々を過ごしていいのか」という質問です。

休職初期は、「休養期」として、できるだけ何も予定を入れず、心身を回復させることに専念する時期です。「何もしていない自分」に焦りや罪悪感を感じる方が多いのですが、この時期に必要なのは、まさに「何もしないこと」です。

回復が進むにつれて、生活リズムを整える段階、軽い活動を取り入れる段階、復職に向けた準備をする段階へと、徐々にステップアップしていきます。今どの段階にいるのかは、主治医と相談しながら見極めていくことが大切です。

一人で「ちゃんと過ごせているか」を判断する必要はありません。定期的な通院の中で、今の自分の状態を専門家と一緒に確認していくプロセス自体が、治療の一部です。

■ ご家族や周囲の方へ——休職中の方をどう支えるか

休職している方を支えるご家族や、職場の上司・同僚、産業医の立場の方からも、「どう接すればいいかわからない」というご相談を多くいただきます。

最も大切なのは、「早く元気になってほしい」という気持ちを、急かす言葉にしないことです。「早く治してね」「もう大丈夫?」といった言葉は、励ましのつもりでも、本人にはプレッシャーとして響くことがあります。

代わりに、「今のままでいいよ」「ゆっくりでいいから」といった、時間的な余白を認める言葉が安心感につながります。また、本人が「休んでいる自分はダメだ」と話したときに、安易に否定せず、「そう思ってしまう気持ちもわかるよ」と一度受け止めてから、「でも今は必要な時間だと思う」と伝える、という順番も効果的です。

職場側の対応としては、復職に向けた段階的なプログラムの整備、産業医・主治医との連携が重要になります。本人の状態に応じた配慮ある対応のために、専門家との連携を取り入れることをお勧めします。

■ こんなときは、専門家に相談してください

休職中、次のような状態が見られる場合は、主治医や医療機関に相談することをお勧めします。

・罪悪感や自己否定の感情が強く、消えてしまいたいと感じる

・眠れない日が続く、または眠りすぎる日が続く

・回復している実感がまったくない

・復職への焦りが強く、無理に動こうとしてしまう

・家族にも本音を話せず、孤立感が強まっている

特に「消えてしまいたい」という気持ちが出てきた場合は、決して一人で抱え込まず、できるだけ早く専門家に相談してください。

■ よくあるご質問

【Q. 休職は何度でもできますか?】

勤めている職場や、ご本人の立場(勤続年数など)によって変わってきますので、まずは勤務先にきちんと確認し、その許容範囲の中で可能な限り対応していくのが現実的です。繰り返し休職することになる場合は、職場環境の調整や治療方針の見直しが必要なケースも多いため、一度立ち止まって、主治医と今後の働き方について相談することをお勧めします。

【Q. 休職中に転職活動をしてもいいですか?】

休職は「今の業務から離れて療養するための制度」であり、転職活動を並行して行うことは、本来の趣旨とは異なります。まずは回復に専念し、復職するか退職するかは、状態が安定したうえで判断することをお勧めします。

【Q. 休職中、家族にどう説明すればいいですか?】

「病気で休んでいる」という事実をシンプルに伝えるだけで十分です。詳細な説明や正当化をする必要はありません。診断書という医学的な根拠があることを、必要であれば伝えてください。

【Q. 罪悪感がなくならない場合、治療で改善しますか?】

はい。罪悪感や自己否定感が強い場合、それ自体がうつ病・適応障害の症状である可能性があります。薬物療法や精神療法によって、こうした認知の歪みが緩和されることは多くあります。罪悪感そのものを治療の対象として相談していただいて構いません。

■ おわりに——休むことは、未来への投資です

「逃げている」のではなく、「自分を守っている」のだと、どうか思ってください。今、休んでいる時間は、無駄な時間ではありません。これから長く働き続けるための、必要な投資の時間です。

市川市・浦安市・船橋市・江戸川区にお住まいの方、休職中で罪悪感に苦しんでいる方、ご家族として支え方に悩んでいる方、どなたもどうぞお気軽にご相談ください。一人で抱え込まず、一緒に今の状態を整理していきましょう。

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【執筆者】

さんメンタルクリニック院長 宇谷悦子

<経歴>

・鹿児島大学医学部医学科卒業

・鹿児島大学医学部眼科入局

・医師免許取得

・島根大学医学部精神医学講座入局

・島根大学医学部附属病院 外来医長 リエゾン医/緩和ケアチーム 兼任

・特定医療法人恵和会 石東病院 診療部長

・大田市立病院 非常勤医

・島根県央保健所こころの相談

・大田市自死対策委員

・南行徳メンタルクリニック副院長

・さんメンタルクリニック院長

<資格・所属学会>

・精神保健指定医

・日本精神神経学会


【編集協力】

本記事は、医療機関の経営支援・Web戦略支援を専門とする

株式会社C&D Hub」の取材・編集協力のもと作成しています。

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