うつ病の人への正しい接し方|家族・職場の人が知っておくべきこと

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うつ病の人への正しい接し方|家族・職場の人が知っておくべきこと

「何か言葉をかけてあげたいのに、何を言っても傷つけそうで怖い」
「ずっと寄り添ってきたけれど、正直もう限界に近い」
「職場の部下がうつ病と診断された。どう接すればいいかわからない」

こんな気持ちを抱えて、この記事を開いてくださった方も多いのではないでしょうか。

うつ病は、本人だけでなく、家族・パートナー・友人・職場の同僚など「周りにいる人」の心にも、じわじわと重さをのせてきます。あなたが今、「どうすればいいのだろう」と悩んでいること自体、それだけ大切な人のことを思っているということです。

この記事では、精神科医として多くの患者さんとその家族と向き合ってきた経験をもとに、うつ病の人への接し方について、できるだけ具体的にお伝えしていきます。

1:そもそもうつ病とはどんな状態なのか

接し方を考えるうえで、まず知っておいてほしいのが「うつ病がどういう状態なのか」ということです。

うつ病は「気持ちの持ちよう」や「意志の弱さ」で起きるものではありません。脳の神経伝達物質(セロトニン・ノルアドレナリンなど)のバランスが崩れることで起きる、れっきとした「脳の病気」です。

厚生労働省の調査によると、日本では生涯を通じてうつ病を経験する人は約15人に1人とされており、誰にでも起こりうる病気です。
参考:厚生労働省「うつ病|こころの病気を知る

うつ病の状態にある方の脳は、まるで「バッテリーが限界まで消耗した状態」だとイメージしてください。充電はほぼゼロ。外から見ると「ただぼーっとしている」「怠けているだけじゃないか」と見えてしまうことがありますが、本人はそこにいるだけで精一杯なのです。

「頑張ろう」と思いたくても思えない。
「楽しもう」と思いたくても感情が動かない。
これがうつ病の本質です。

この前提を持っているかどうかで、接し方はまったく変わってきます。

2:よかれと思ってやってしまいがちなNG行動

善意からやってしまいがちな行動が、本人を追い詰めることがあります。代表的なものをいくつか挙げます。

■「原因を突き止めようとする」

「何がそんなに嫌なの?」「仕事のせい?人間関係?」と原因を探ろうとするのは、自然な反応です。でも、うつ病の方にとって「なぜ?」という問いかけは、「あなたには理由がなければ落ち込む権利がない」というメッセージに聞こえてしまうことがあります。うつ病は、はっきりした「原因」がなくても起こります。

■「解決策を提案する」

「運動してみたら?」「気分転換に旅行でもしたら?」「もっとポジティブに考えようよ」——これらはすべて、バッテリーが切れた状態の人に「走れ」と言っているようなものです。言った側に悪意はないのですが、本人は「それができないから苦しいのに」とさらに自信をなくしてしまいます。

■「以前の元気だった姿と比べる」

「あのときは明るかったのにね」「昔はそんな人じゃなかったのに」という言葉も、本人には刺さります。変わってしまった自分を責める気持ちが強い方にとって、比較は傷口に塩を塗ることになりかねません。

■「過度な見守りと干渉」

心配するあまり、四六時中様子を確認したり、外出するたびについていったり、というのも逆効果になることがあります。本人が「監視されている」「自分のせいで家族が苦しんでいる」と感じてしまい、罪悪感が増してしまいます。

■「元気づけようと無理に連れ出す」

「こもっていると余計に落ち込む」と思って、強引に外出させようとする方もいますが、回復初期のうつ病には「刺激を受けないこと」「休むこと」が何より大切です。本人が「行きたい」と言い出すのを待つ姿勢が基本です。

3:言ってはいけない言葉・言い換えのヒント

「言葉を間違えたくない」という不安は、うつ病の方の家族からよく聞きます。完璧な言葉はなくても、「避けたほうがいい言葉」と「比較的伝わりやすい言い換え」を知っておくと、少し楽になれます。

× 「頑張れ」「もっと元気出して」
→ ○「無理しなくていいよ」「ゆっくりしていていいからね」

× 「気持ちの問題だよ」「考えすぎじゃない?」
→ ○「しんどいね。そう感じて当然だと思う」

× 「みんな大変なんだよ」「自分だけじゃない」
→ ○「あなたが今つらいのはわかってる」

× 「いつ治るの?」「早く良くなってほしい」
→ ○「焦らなくていいよ。時間をかけていこう」

× 「私のことは気にしなくていい」(過度な自己犠牲の強調)
→ ○「私も一緒にいるから、何かあったら話して」

大切なのは「否定しないこと」「急かさないこと」「答えを求めないこと」の3つです。

「何か言わなければ」と焦る気持ちはわかりますが、黙って隣にいるだけでも、本人には「ひとりじゃない」という安心感が届くことがあります。

4:本当に助かる「正しい寄り添い方」

では、実際に何をすればいいのか。長年の診療経験から、本人が「助かった」と話してくれることが多い関わり方をお伝えします。

■「共感」を言葉にする

「そっか、それはしんどかったね」「よく話してくれたね」という、評価や解決を挟まない言葉かけは、本人の心に届きます。「この人には正直に話しても大丈夫」と感じてもらえると、回復への第一歩になります。

■「存在を肯定する」

「ここにいてくれるだけでいい」「何もできなくていい」という言葉は、うつ病の方にとって、心の底まで届くことがあります。生産性や成果でしか自分を認められなくなっているとき、「いるだけで価値がある」というメッセージは大きな支えになります。

■「日常の小さなこと」をそっとサポートする

「ご飯作っておいたよ」「洗濯しておいたね」と、求められる前に生活を下支えしてあげることは、本人の負担を減らす大きな助けになります。「できていない自分」を突きつけない、さりげないサポートが理想的です。

■「受診や治療を一緒に考える」

「専門家に診てもらったらどうかな」と提案するとき、「私も一緒に行くよ」と添えることで、心理的なハードルが下がります。「行って来い」ではなく「一緒に行こう」というスタンスが大切です。

■「本人のペースを尊重する」

「今日は話したくない」という日があってもいい。「外に出たくない」でもいい。回復は直線ではなく、良い日と悪い日を繰り返しながら、少しずつ上向いていきます。進んでいるように見えない時期でも、本人は戦っています。

5:家族・パートナーが疲弊しないために

うつ病の方を支える家族やパートナーが、知らず知らずのうちに追い詰められてしまうことは珍しくありません。「仕事 体調不良 休みすぎ 迷惑」「うつ病 周りが疲れる」といった言葉が検索されているほど、支える側の消耗は現実の問題です。

まず知っておいてほしいことがあります。

あなたが疲れてしまうのは、弱いからではありません。

うつ病の方を長期間支えることは、本来、一人の人間が全部担えるようなものではありません。それでも毎日そばにいようとしている、それ自体がどれほどのことか。その事実をまず自分で認めてほしいのです。

支える側が倒れてしまっては、本人を支え続けることもできなくなります。以下のことを意識してみてください。

・「自分だけで何とかしなければ」という思い込みを手放す
・一人で抱え込まず、医師やカウンセラーに「家族としての相談」をする
・自分の時間・自分の楽しみを意識的に確保する
・「完璧に支えられなくていい」と自分に許可を出す

当院では、患者さん本人だけでなく、ご家族からのご相談もお受けしています。「どう接すればいいかわからない」という相談も、遠慮なくおっしゃってください。

6:職場での接し方|上司・同僚へのポイント

職場でうつ病の同僚・部下を持ったとき、どう対応すべきか悩む方も多くいます。

■ 上司として

休職の判断は、本人の希望だけでなく、医師の診断を尊重することが基本です。「もう少し様子を見よう」「軽症だからまだ働けるはず」という判断は、悪化のリスクを高めます。本人が受診を躊躇しているなら、「受診してみてはどうか」と背中を押すことも上司の大切な役割です。

復職のタイミングは、本人の「早く戻りたい」という気持ちではなく、主治医の判断を中心に据えてください。うつ病は「頑張れば働ける」ではなく「医学的に回復した状態で働ける」が正しい基準です。

■ 同僚として

「何か手伝えることある?」よりも「これ代わりにやっておいたよ」のほうが、本人には助かります。「気遣ってもらっている」と感じるより、さりげなく負担を減らしてもらえるほうが、罪悪感を持ちにくいからです。

また、「元気になった?」「最近どう?」という問いかけも、悪意はなくても本人にはプレッシャーになることがあります。普通に接しながら、でも無理させない——そのバランスを意識してみてください。

■ 職場全体として

「精神疾患 職場 迷惑」という言葉が検索されている現実があります。うつ病に対するスティグマ(偏見)はまだ根強く残っていますが、それは多くの場合、正しい知識がないことから来ています。一人の人間が回復して職場に戻れる環境をつくることは、職場全体の心理的安全性にもつながります。

7:「受診してほしい」と思ったときの伝え方

家族や友人を見ていて「一度専門家に診てもらってほしい」と思っても、どう切り出せばいいかわからない、という方は多くいます。

気をつけてほしいのは、「受診を強制しない」ということです。「病院に行け」「早く治してくれ」という言い方は、本人を責めているように聞こえ、かえって受診のハードルを上げます。

伝えるときのポイントはこの3つです。

① 「私が心配している」という気持ちから話す
「あなたのことが心配で」「最近つらそうに見えて」という形で、命令ではなく気持ちとして伝える。

② 「一緒に行く」と伝える
「一人で行かなくていいよ、私も行くから」という一言で、受診への抵抗感がかなり下がります。

③ ハードルを下げる情報を添える
「話を聞いてもらうだけでもいいらしいよ」「最近はオンライン予約もできるみたいだよ」といった情報は、「行くまでの心理的な壁」を小さくします。

市川市・浦安市・船橋市・江戸川区にお住まいの方であれば、さんメンタルクリニックへのアクセスは比較的便利です。南行徳駅から徒歩1分という立地で、「ちょっと話を聞いてもらいに行く」という気持ちで来院いただける環境を整えています。

8:家族や周囲の方もひとりで抱え込まないでください

この記事を最後まで読んでくださったあなたへ。

「どう接すればいいか」を調べるほど、大切な人のことを思っている。それはとても大切なことです。同時に、あなた自身のこともどうか大切にしてください。

支える側が追い詰められてしまったとき、それは本人にも伝わります。あなたが元気でいることが、うつ病の本人にとっても大きな安心になります。

「自分がどうすればいいかわからなくなった」という時には、ぜひ一度、専門家に相談してみてください。本人と一緒でなくても、家族だけで来院されることも可能です。「家族としてどう関わればいいか」というご相談も、当院では丁寧にお聞きしています。

うつ病は、回復できる病気です。
適切な治療と、正しい関わりの中で、必ず少しずつ光が見えてきます。
一人で抱え込まず、一緒に考えていきましょう。

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【監修・著者プロフィール】

さんメンタルクリニック院長 宇谷 悦子(うたに えつこ)

■ 経歴
・鹿児島大学医学部医学科 卒業
・鹿児島大学医学部眼科 入局
・医師免許取得
・島根大学医学部精神医学講座 入局
・島根大学医学部附属病院 外来医長 リエゾン医 / 緩和ケアチーム 兼任
・特定医療法人恵和会 石東病院 診療部長
・大田市立病院 非常勤医
・島根県央保健所 こころの相談
・大田市自死対策委員
・南行徳メンタルクリニック 副院長
・さんメンタルクリニック 院長(現在に至る)

■ 資格・所属学会
・精神保健指定医
・日本精神神経学会

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本記事は、医療機関の経営支援・Web戦略支援を専門とする
「株式会社C&D Hub」の取材・編集協力のもと作成しています。
https://cdhub.co.jp/
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