うつ病カウンセリングの効果と精神科・心療内科の違い|精神科医が解説
「カウンセリングって、うつ病に本当に効くの?」「精神科と心療内科、どちらに行けばいいかわからない」「薬を飲まずにカウンセリングだけで治したい」——こういった疑問や悩みを、診察室でもよく耳にします。
受診を考えているけれど、どこに行けばいいか迷っている。カウンセリングに興味はあるけれど、何をするのかよくわからない。薬とカウンセリングの違いも、いまいちピンとこない——そういった方のために、今回はできるだけわかりやすく整理してお伝えします。
「自分に合った治療を受けたい」と思うこと自体、回復への大切な一歩です。まずは知識を整理するところから始めましょう。
■ 精神科と心療内科——何が違うのか
まず、多くの方が混乱しやすい「精神科」と「心療内科」の違いから整理します。
【精神科】
精神科は、うつ病・不安障害・統合失調症・双極性障害・発達障害など、脳や精神に関わる疾患全般を専門とする診療科です。精神保健指定医・精神科専門医といった資格を持つ医師が診察にあたります。精神疾患の診断・薬物療法・精神療法を中心に行い、重症から軽症まで幅広いケースに対応します。
【心療内科】
心療内科は、ストレスや心理的な要因によって引き起こされる身体症状(胃潰瘍・過敏性腸症候群・頭痛・高血圧など)を専門とする診療科です。「心身症」と呼ばれる状態が主な対象です。軽〜中等度のうつ状態や適応障害であれば対応できる場合もありますが、重症のうつ病や精神疾患の診療は精神科が適切です。
【実際のクリニックではどうなっているか】
現在、多くのクリニックでは「精神科・心療内科」と両方を標榜しているところが多く、実際には精神科医がうつ病・不安障害・適応障害などを幅広く診ています。「どちらを受診すればいいかわからない」と悩むよりも、「自分の症状に近い疾患を診ているか」「精神科を専門に診ている精神科医がいるか」を確認する方が実用的です。
うつ病・不安障害・適応障害・パニック障害などで困っている場合は、精神科(または精神科・心療内科を標榜するクリニック)への受診が適切です。
▼ 参考:厚生労働省「みんなのメンタルヘルス──医療機関の種類」
■ カウンセリングとは何か——「話を聞いてもらうだけ」ではない
「カウンセリング」という言葉は広く使われていますが、その内容は一般的なイメージとかなり異なります。
「ただ話を聞いてもらうだけでしょう?」と思っている方が多いのですが、医療機関で行われるカウンセリング(精神療法・心理療法)は、特定の理論・技法に基づいた専門的な治療です。
【カウンセリング(精神療法)の主な種類】
▷ 認知行動療法(CBT)
現在、うつ病・不安障害への効果が最も科学的に示されている心理療法のひとつです。「ものの受け取り方のクセ(認知の歪み)」に気づき、より現実的・柔軟な考え方を練習することで、気分の回復を図ります。「最悪のことしか考えられない」「自分はダメだと決めつけてしまう」といった思考パターンを、丁寧に検証していく作業です。
▷ 支持的精神療法
話を聞き、気持ちを受け止め、安心感を与えることを中心とした療法です。特に、まだ症状が重い時期の治療的な対話として行われます。「理解してもらえた」という感覚が、回復の土台になります。
▷ 対人関係療法(IPT)
うつ病の発症や維持に関わる人間関係のパターンに焦点をあて、現在の対人関係の改善を通して気分の回復を図る療法です。
▷ マインドフルネス認知療法(MBCT)
「今ここ」に意識を向けるマインドフルネスの実践と認知療法を組み合わせた療法で、特に再発予防として効果が示されています。
■ カウンセリングはうつ病に効くのか
結論から言うと、カウンセリング(特に認知行動療法)はうつ病の治療として、十分な科学的根拠を持っています。
軽〜中等度のうつ病においては、認知行動療法は抗うつ薬と同程度の効果があることが複数の研究で示されています。また、薬物療法との組み合わせによって、単独の治療よりも再発率が低下するというエビデンスもあります。
ただし、いくつかの条件があります。
まず、急性期(症状が最も重い時期)には、カウンセリングよりも薬物療法と休養が優先されます。脳の機能が著しく低下している状態では、カウンセリングで思考を整理する作業自体が負担になることがあるからです。
次に、「どんなカウンセリングでも効く」というわけではなく、訓練を受けた専門家が適切な技法を用いることが重要です。「友人に話を聞いてもらう」「SNSで発散する」とは、性質がまったく異なります。
そして、カウンセリングには「続けること」が必要です。1〜2回で劇的に変わるものではなく、数週間〜数か月にわたって継続的に取り組むことで効果が現れてきます。
■ 薬とカウンセリング、どちらが自分に合っているか
「薬を使わずカウンセリングだけで治したい」という方は少なくありません。その気持ちは理解できます。ただ、実際の治療ではどちらが適しているかは、症状の重さと回復の段階によります。
【薬物療法が優先される場面】
・症状が中等度以上で、日常生活が送れない状態
・睡眠障害・食欲低下・強い倦怠感など、身体症状が強い
・希死念慮(消えてしまいたいという気持ち)がある
・カウンセリングに集中できるだけの認知機能が回復していない
こういった状態では、まず薬で脳の状態を整えることが先決です。「思考を整理する作業」は、ある程度回復が進んでからでないと、十分な効果が得られません。
【カウンセリングが有効な場面】
・急性期を脱し、症状が落ち着いてきた回復期
・「なぜ自分がうつになったのか」「どうすれば再発を防げるか」を整理したい
・思考のクセや行動パターンを変えていきたい
・薬を減らしていく段階で、心理的なサポートが必要
【薬とカウンセリングの組み合わせが最も効果的】
多くの場合、薬物療法で土台を整えながら、回復に合わせてカウンセリングを取り入れる、という組み合わせが再発率を下げる意味でも有効とされています。「どちらか一方」ではなく「適切なタイミングで組み合わせる」という視点が大切です。
■ 受診を迷っている方へ——「相談だけ」でも来ていい
「カウンセリングを受けてみたいけど、どこに相談すればいいかわからない」「まず話を聞いてもらえるだけでもいい」という方は、まずクリニックへの受診からスタートすることをお勧めします。
初診では、症状や状況について医師がお話をうかがい、どのような治療・サポートが適切かを一緒に考えていきます。「カウンセリングを受けたい」「薬は使いたくない」「まず診断だけ聞きたい」という希望も、遠慮なく伝えていただいて構いません。
市川市・浦安市・船橋市・江戸川区にお住まいの方、またその周辺エリアからも、さんメンタルクリニックにご相談いただけます。「まず話だけでも」という方のご来院もお待ちしています。
■ よくあるご質問
【Q. カウンセリングと診察は別のものですか?】
はい。精神科の診察は医師が行うものであり、カウンセリング(心理療法)は公認心理師・臨床心理士などが担当するものです。医師の診察のみのクリニックと、心理士によるカウンセリングも提供しているクリニックがあります。受診前に確認しておくとよいでしょう。
【Q. カウンセリングに保険は使えますか?】
医療機関で行われる「精神療法」は健康保険が適用されます。ただし、保険適用のカウンセリングは時間が限られるケースもあります。詳細はクリニックに確認してください。民間のカウンセリングルームは原則として保険適用外です。
【Q. 「薬を飲みたくない」と伝えても大丈夫ですか?】
もちろんです。薬への抵抗感は率直に伝えてください。症状の程度や状況によっては、薬なしで様子を見る選択もあります。ただし、「薬を使った方が回復が早まる可能性がある場合」については、医師から説明があります。最終的な判断は患者さん自身がするものですが、その判断に必要な情報をしっかり提供します。
【Q. 何回カウンセリングを受ければ効果が出ますか?】
一般的に、認知行動療法では8〜16回のセッションが標準的とされています。ただし個人差があり、症状の重さや目標によって異なります。「1回で変わる」というものではなく、継続が大切です。
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初めての方も、お気軽にご利用ください。
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■著者
さんメンタルクリニック院長 宇谷悦子
<経歴>
・鹿児島大学医学部医学科卒業
・鹿児島大学医学部眼科入局
・医師免許取得
・島根大学医学部精神医学講座入局
・島根大学医学部附属病院 外来医長
リエゾン医/緩和ケアチーム 兼任
・特定医療法人恵和会 石東病院 診療部長
・大田市立病院 非常勤医
・島根県央保健所こころの相談
・大田市自死対策委員
・南行徳メンタルクリニック副院長
・さんメンタルクリニック院長
<資格・所属学会>
・精神保健指定医
・日本精神神経学会
本記事は、医療機関の経営支援・Web戦略支援を専門とする
「株式会社C&D Hub」の取材・編集協力のもと作成しています。