うつ病の家族が疲れるのは当然です|共倒れしないための支え方を精神科医がお伝えします
「毎日同じことを言っている気がする」
「励ましたら泣かれた。黙っていたら『冷たい』と言われた」
ご家族がうつ病になると、こうしたやり場のない思いを抱える方が多くいらっしゃいます。診察室では、患者さんご本人より先に、付き添いのご家族が涙をこぼされることもあります。
最初にお伝えしたいことがあります。うつ病の方のそばにいて疲れるのは、ごく自然なことです。あなたの愛情や我慢が足りないから疲れるわけではありません。
この記事では、市川市・浦安市・船橋市・江戸川区の方々から多くのご相談をいただいてきた経験をもとに、ご家族が倒れずに支え続けるための考え方をお話しします。
なぜ、うつ病の家族はこんなにも疲れるのか
回復の道のりに「波」がある
うつ病の回復は、階段を一段ずつ上るようには進みません。良い日と悪い日を繰り返しながら、少しずつ上向いていきます。
昨日は少し笑顔が見えたのに、今日は一日中布団から出てこない。そうした揺れに付き合ううちに、「いつまで続くのだろう」と気持ちがすり減っていきます。先が見えない状態は、それだけで人を疲れさせます。
「言葉が届かない」と感じてしまう
うつ病になると、考える力や感情を表に出す力が一時的に落ちます。話しかけても反応が薄い、返事がない、表情が変わらない。
ご家族は「拒絶された」「嫌われているのかも」と受け取りがちですが、多くは病気の症状によるものです。頭では分かっていても、毎日続くとやはりこたえます。
家事・仕事・手続きが一人に集中する
ご本人が担っていた家事や育児、家計の管理を代わりに引き受け、さらに職場への連絡や休職の手続きまで。気づけば自分の睡眠時間を削っていた、という方は少なくありません。
特に女性のご家族の場合、介護や子育てと重なり、ほとんど休む間がないこともあります。
周りに打ち明けにくい
「夫がうつ病で」「母がうつ病で」と気軽に話せる相手は多くありません。勇気を出して親戚に相談したら「甘えじゃないの」と言われて傷ついた、というお話もよく伺います。
誰にも話せずに抱え込むこと自体が、心にとって大きな負担になります。
こんな状態が続いていたら、あなた自身も休むサインです
ご家族ご自身に、次のような変化は出ていないでしょうか。
- 寝つけない、夜中に何度も目が覚める
- 食欲がない、または食べすぎてしまう
- ご本人の足音や物音に、びくっとしてしまう
- 好きだったことに興味がわかない
- 理由もなく涙が出る
- 「もう全部投げ出したい」と思う瞬間がある
こうした状態が2週間以上続いているなら、あなたの心も悲鳴を上げているのかもしれません。
看病するご家族が、気づかないうちにうつ状態になってしまうことは珍しくありません。そして支える側が倒れてしまえば、ご本人の療養環境も揺らいでしまいます。あなたが休むことは、ご本人のためでもあるのです。
うつ病の症状や治療については、厚生労働省のサイトでも分かりやすく解説されています。
▶ 厚生労働省「みんなのメンタルヘルス総合サイト」うつ病
家族が倒れないための5つの支え方
1.「治そう」としなくていい
大切な人が苦しんでいると、なんとかして治してあげたいと思うのは当然です。けれど、治療を進めるのは医師とご本人の役目です。
ご家族にお願いしたいのは、ご本人が安心して休める環境を整えることです。それだけで、すでに十分すぎるほど大きな役割を果たしています。
2. 言葉を探すより「そばにいる」
「『がんばって』は言わないほうがいいと聞いたけれど、じゃあ何を言えばいいのか分からない」。これもよくいただくご相談です。
無理に気の利いた言葉を探す必要はありません。「お茶いれたよ」「何かあったら言ってね」くらいで十分です。沈黙を埋めようとしなくても、同じ空間にいてくれる人がいること自体が、ご本人の支えになります。
3. 大きな決断は「元気になってから」
うつ病の最中は判断力が落ちるため、「仕事を辞めたい」「離婚したい」「引っ越したい」と急に言い出すことがあります。
頭ごなしに否定せず、「その話は、もう少し元気になってから一緒に考えよう」と、決断を先延ばしにするよう伝えてみてください。
4. 自分の時間を「予定」として確保する
ご本人がつらそうにしている横で自分だけ出かけるのは、罪悪感があるかもしれません。それでも、週に一度、1時間でもかまいません。散歩、カフェ、友人とのおしゃべりなど、自分のための時間をあらかじめ予定に入れてしまいましょう。
「空いたら休む」では、いつまでも休めません。休むことも、支える仕事の一部です。
5. 一人で抱えず、外の力を借りる
ほかの家族や親族、信頼できる友人、お住まいの自治体の相談窓口、そして医療機関。頼れる先は一つでも多いほうが安心です。
「迷惑をかけるのでは」と遠慮される方ほど、限界まで頑張ってしまいます。早めに誰かを巻き込むことが、長く支え続けるコツです。
「死にたい」と言われたときは
ご本人から「消えてしまいたい」「死にたい」という言葉が出ると、ご家族は動揺して、とっさに「そんなこと言わないで」と返してしまいがちです。
まずは否定せずに、「そう思うくらいつらいんだね」と受け止めてください。そのうえで、できるだけ一人にしないこと、早めに主治医へ伝えることが大切です。差し迫った危険を感じたときは、ためらわず救急に連絡してください。
ご家族だけで抱えきれないときは、電話やSNSで相談できる窓口もあります。
▶ 厚生労働省「まもろうよ こころ」
ご家族ご自身が受診してもいいのです
「病気なのは家族のほうだから、自分が病院に行くのは違う気がする」。そう思われる方も多いのですが、眠れない、気持ちが沈む、涙が止まらないといった状態があれば、それはあなた自身が診察を受けてよいサインです。
受診されたときには、ご自身の不調だけでなく、ご本人との関わり方で悩んでいることもあわせてお話しください。「こう声をかけていいのか」「このまま見守っていていいのか」。一人で考え続けていた迷いを言葉にするだけでも、気持ちが軽くなることがあります。
また、ご本人の診察にご家族が付き添われることもよくあります。ご家族から見た普段の様子は、治療を進めるうえで大切な情報になります。
市川市・浦安市・船橋市・江戸川区で相談先をお探しの方へ
うつ病の治療は、時間がかかることも少なくありません。だからこそ、ご本人だけでなく、そばで支えるご家族も一緒に息をつける場所が必要です。
「こんなことで受診していいのかな」と迷っている段階でも、どうぞお気軽にご相談ください。
さんメンタルクリニックでは、WEBからのご予約が可能です。電話がつながりにくい時間帯や、夜遅くにふと思い立ったときでも、スマートフォンから24時間ご予約いただけます。
著者
さんメンタルクリニック院長 宇谷悦子
経歴
- 鹿児島大学医学部医学科卒業
- 鹿児島大学医学部眼科入局
- 医師免許取得
- 島根大学医学部精神医学講座入局
- 島根大学医学部附属病院 外来医長
リエゾン医/緩和ケアチーム 兼任 - 特定医療法人恵和会 石東病院 診療部長
- 大田市立病院 非常勤医
- 島根県央保健所こころの相談
- 大田市自死対策委員
- 南行徳メンタルクリニック副院長
- さんメンタルクリニック院長
資格・所属学会
- 精神保健指定医
- 日本精神神経学会
本記事は、医療機関の経営支援・Web戦略支援を専門とする「株式会社C&D Hub」の取材・編集協力のもと作成しています。